今日は、二つ新しいことを知った。



一つは、この青年が伊予の出身で最近江戸からこちらに来たこと。



二つは、この青年はどうしてやりたいことを叶えるために京に来たこと。




こうした僅かな情報でさえ、青年のことを知れると胸が高鳴った。




ほかの客と話す時より楽しそうに笑顔を見せるさよの気持ちに店主夫婦もまた頬を緩めていた。




その反面、夫婦には気になることがあった。




青年が決まって、他の客がいないときに来ることだ。




これだけなら、さよと話す時間を取りたいからだと考えられるのだが、この青年がいると不思議なことに他の客は店に足を踏み入れることはなかったのだ。