なぜか勝ち誇った表情で、珠手の肩に手を置いている。

それが余計に珠手の神経を逆撫でした。

眉に皺を寄せ不機嫌を露わにする。そしてその矛先はあろうことかガッツリ私に向けられる羽目になった。



「……そういえば、隣に住んでるのって子供だって言ってたけど、こいつどうみても成人だろ。俺に嘘ついてたのか?」


「いや、そんな……違うよ」


「違わないよ。だって庵歩、こいつに気を許してるじゃん。引っ越してきてあんまりたってない奴とこんな親しくなってるとか、やましいことがあるとしか思えない。俺に言えないような……」


気を許すというか気が抜けるに近いんだけれど、と今はそんな駄弁る力がない。
クラクラする頭のせいで呂律が回らないし厄介だ。

幸助はナツ君の叔父だから、というその単純な言葉がすぐに出なかった。


その微々たる間で私が肯定したと完治した珠手はワントーン下がった声で部屋の空気を凍らせた。



「やっぱりそうなんだな」


 私にはなぜ珠手が不機嫌になってしまったのか分からなかった。


「もういいよ、友達だと思ってたのに」


 立ち上がって私に背を向ける珠手。


「どこ行くの……?」

「帰る。早く元気になれよ」

「珠手………」


部屋を出ていく珠手を引き止めようと手を伸ばすが、その手を幸助に掴まれた。


「庵歩さん放っておきましょう」

「でも………」

「大丈夫ですから」


 幸助は玄関の方に視線を向け、それから私に微笑みかけた。


「とにかく早く治して元気にならないと。ね?」


 ───バタン、と玄関がしまる音がした。