見渡す限り、書店の中にはいないようだ。


誘っておいて、やっぱやめにしたとかだったら秘伝の殺戮チョップをお見舞いしなければならない。

そんなことを思いながら書店を出ると、珠手がいた。

書店の前に設置してある、ベンチに腰を下ろし腕を組んだまま寝こけている。



「待たせたな」



 その掛け声とともに私は眠る珠手に殺戮チョップ(慈悲バージョン)をお見舞いした。

珠手は「うわっ」と起きた。

何が起こったかわからない、半分寝ぼけた状態だった。かわいそうに。


「なんだ、庵歩か……意外と早かったな」

「庵歩か………じゃないよ。ちょっと早く上がらせてもらったの!」


 珠手はわあわあと大きなあくびをひとつすると、のそりと立ち上がって


「じゃあ、行くか」と半分眠ったような目で歩き出した。