「もう少し長いストレート。茶色っぽいけど染めてはいない」

頭の中で色が白くふっくらとした頬のマヤさんから金髪のボブヘアを外し、栗色のセミロングの髪型に変えてみたら、ぐっとかわいらしい印象になった。
その面影は誰かに似ている。
けれどいくら思い起こしても、その誰かにたどり着けない。

「般若面。怖いぞ」

龍道コーチが透子の額を指す。眉間にしわを寄せていたらしい。

「マヤさんて誰かに似ているんだけど、思い出せなくて」
いらないなら食べるぞと、龍道コーチがさっきと同じように透子の皿に残っているタルトに手を伸ばした。
透子はとっさに目の前のタルトをつかんで阻止した。

「じゃあその三、私を送ろうとした理由は?」
「話したいことがあったから」
「私に?」

龍道コーチのクラスには入ったばかりだし、親しくもないし、スクール以外での接点はない。
迷惑をかけた覚えはないし、告られる可能性は皆無だし、何の話があるのか皆目見当がつかなかった。
唯一考えられるのは――。