「先のことなんてわからない。でも2年後も俺たちが一緒にいられたら、きっと、ずっと一緒だ」

そう言って、龍道コーチはパリパリと香ばしい音をたてながらきつね色の春巻きにかぶりついた。
とても大事なことを口にしていると思うのだが、まるで休暇の予定を話すかのように軽く言うので、透子も田淵もその言葉の本意がわからず、龍道コーチをじっと見つめた。

「あのさ、もうすぐ結婚するのよね?」
「結婚? 誰が? 俺? そんなわけないだろ。この話の流れで結婚が決まってたらおかしいだろう」

頭の悪い子供を見るようなあきれ顔をされ、田淵からも胡乱な目で見られ、透子はたじろぐ。

「でも、金子さんからそう聞いたけど」
「おまけに透子さん、コーチにつきまとう年増のストーカーなんて噂まで流されてるんだよ」

田淵が大げさに眉根を寄せて同情を表すが、目が笑っている、と言うか今にもふきだしそうに口元がとんがっている。

年増のストーカーってあんまりだ。
あらためて心が萎れ、透子は田淵を睨む。