「いや、あの、イニシャルで…」
「えと…んと……N・K!」
「あぁ、うん」

"神田 乃亜"
俺の一年の時の彼女だった。
半分以上遊び、いや、思いっきり遊びだった。
そんな遊び相手に俺が言うと想うか?

「後ねー」
「いや、もういい。やめてくれ」
「い・や・だ」

「俺、手繋ぎたいな…」
「ごめん、あたしチャリ通だから、無理」
前を向くと再現ドラマをしている二人。
恥ずかしそうに反対方向を見て、俯いてもじもじしている晃と後頭部に手を当て、ケラケラ笑いながら拒否る麻田

…だから、やってねぇって

「なんだっけ…」
「そのまま忘れておいてくれ…」
「…あ、柳ちゃーん」
「…え?」

「って呼ばれてたんだって?」

確かに呼ばれていた。
柳ちゃんって。
でもそれは小学生の時!
中1の時は関係ねぇだろ!
「呼ばれて耳ふさいでうずくまって
『やめてぇ!やめてぇ!』
 とか言ってたらしいねぇ〜」
ニヤニヤしながら近づいてくる森松。
後ずさりする俺。
「い、いってねえ」
「嘘だぁ〜。あたし元カノちゃんから聞いてるんだからね〜」
「っち」
「なによ、今のっちって!」

このやり合いが15分続いた時、鐘がなって先生が入ってきた。
「ほら、てめぇら座れっ!」
「いやーん、柳ちゃんこわーい」
「ひどーい」

前にいたやつらを追い払った後、多分俺の顔は赤く染まっていただろう
「ぷっ、森崎真っ赤」
俺の顔をみた森松が手をくちにあて見下した笑いをした。
「どう?あたしの"復讐劇"」
「…おまえっ、あれ全部!」
今までなんでニヤニヤしながら、しかもあいつらの居るところでわざと話すのか理由がはっきりした。
全ては、こないだの付き合ってる、付き合ってないの仕返しだったのだ。
そうわかると俺は急に恥ずかしくなってきた。
「だーっ…お前には負けたよ」
「ふふん♪あたしに勝とうって方が無駄なんだよね」

―こうして、俺等はどんどん友情を深めていった