これが数ヶ月前のことだ

「…あんた、誰だっけ」

彼女が初めて発した言葉がその一言。
俺は正直びっくりした。
去年あそこまで話したのに、そんなに俺は影薄かったっけ?


「森崎 柳だけど」
「…森崎…森崎…柳…?」


ぶつぶつ何かを言っているが全く思い出せないらしい。
「お前の友達の風理に聞いてみろよ」
「美沙?…四組?」
「そうそう!」

「てか、何であたしにいきなり話しかけるわけ?
 そこがわかんない。
 あいつ友達多いからあたしじゃないくても−…」

そう言いため息をつく。
"あたしじゃなくても"
その言葉に俺の脳内に火がついた
「今、お前あたしじゃなくても って言ったよな…」
「は?あんたいきなりな」
「言ったよな!」
「あ、はい」
「俺は、お前と話した事あるかっつってんのに
なんで違う奴に話さなきゃなんねえんだよ!
バカか!?」
「…(なにこいつ」

言いたい事を言い切った俺は、席に座った。
森松、森崎といい具合に席は隣なのである。
「…あ」
「は?」
突然何かを思い出したように、森松が手を叩き
俺の顔を見出した。

「わかった、聡の友達だ」
「…うん」
「こないだ、隣の席森崎柳ってやつなんだけどって美沙に言ったら
 "そいつ、元うちのクラスだよ。
  桜かなりからかわれてたじゃん"
 っていわれてたんだ。」

ケラケラ笑いながら、指を指し説明する森松。
つまり、先日言われてたにも関わらず、すっかり忘れてたって事だ。
俺、そんな影薄いキャラだったっけ?

って、これさっきも言ったよな
「お前、バカだろ…」
「なっ!バカとは失礼な」
「いや、失礼もなにもねぇよ」
「女の子に向かってそんな事言うなんて」
「あーはいはい、わるかった。」

そこから俺等は二人で笑い合った。
クラスの奴らに仲いいねーと言われるほど、仲よくなった。