一見派手派手しいフレデリカ様だけど、次期王妃としての素養は確かなものだと思う。

 成績は優秀だし、立ち居振る舞いも美しいし、私はあんまり関わらないけどフレデリカ様が声をかけてくださったことがあるからいつもご挨拶だけは絶対にしている。

 そんなときだっていやな顔は絶対しない。「ごきげんよう、良い夜ね」と笑ってくださる。

 ……え? というかそんなフレデリカ様が婚約破棄?


「ま、ま、待ってください!」

「きみは……アランスタイン子爵令嬢」

「なっ、にをしているんだ! イース!」

「イース様……どうして……!」


 どうしよう、何も考えずに飛び出してきてしまったけどフレデリカ様が一番驚いている。

 ああほらもう泣いてるじゃん! 十六そこいらの女の子がこんな衆人環視の中で大きな声で悪者めとか言われたら泣いちゃうに決まってるじゃないですか。

 でも不敬罪とかは怖いから小市民は王太子をにらみつけたりできません。

 ジーク様がめちゃくちゃ慌てたような顔をしているのだけが救いだ。

 よかったちゃんと人間っぽい。魅了の魔法みたいなファンタジー設定だと話通じないロボットみたいになっちゃうもんね。

 フレデリカ様に私の、といってもフレデリカ様のより幾分くたくたのハンカチを渡して後ろにかばう。王太子たちは怪訝な顔をした。