「私が乗馬がもっと上手ければ遠乗りでもなんでもできるんですけど……」
「別にイースが気にすることじゃないだろう。その気持ちだけで……あー、そうだ、もし嫌でないなら二人で馬で出かけよう。そんな遠くまではいけないがのんびり日帰りで行くくらいにはいい距離になると思う」
「お気遣い感謝いたしますわ……」
「じゃあ次に会うときはそうしよう、なあイース」
なんて優しくてできた人なんだろうと思って涙が出てくる。
小さく鼻をすすっただけなのに「どうしたイース!? 寒いのか!? ブランケットを持ってきてもらおう!」と大慌てでメイドに声をかけるところも日本の男子中学生じゃそうはいくまいと思う。貴族すごい。
ここが乙女ゲームの世界だったら私も婚約破棄されるモブの一人だったんだろうなあと思う。
学園に通って悪役令嬢の取り巻きとかしてたと思う。
厳密には学校に通うのは来年からだからそうなるかもしれない。いや、悪役令嬢なんて現実に居るわけないじゃんとも思うけど。もしよ、もし。
なんて思ってたわけですよ。ずっと。