そんな私イースにも婚約者はいる。

 うちは小さい子爵家なので引く手あまたとはいかなかったけれど幸いなことにお隣(の領)のシュベルク伯爵家の長男が私と同い年ということで縁談が決まったのが十歳のときだった。

 お隣さんだし今後ともよしなにーって感じだったらしいとはメイド長の弁である。

 まあ緩いことはないけど厳しくないのが我が家とお隣さんゆえそんなもんなんだろう。

 今年の夏ごろの彼の誕生日付近で王都でデビュタントがある。

 それによっていろいろ不測の事態が起きそうな気がするので早めに手を打っておきたいなあなどと思っている。ここ一年くらい。


「イースお嬢様、ジーク様がお見えですよ」

「あ、はい。すぐ行きます」


 ここの言語が日本語と違うことはわかるが、英語とかフランス語でもないので説明しにくい。

 ただ、日本語であればわたしとかあたしとかわたくしとかあるのに英語はアイとしか言わないのを鑑みたら一応ここでの言語体系は外語に近いものがある。

 頭の中でなんとなく変換されてるからそれっぽい一人称に聞こえるけど。見た目とか態度とか。(要はお嬢様たちもアイと言ってるのにわたくしって副音声が聞こえる。)

 彼もそうだ。話し方とか。