ジーク様は、というと。

 私が知らなかっただけで、どうやら周囲ではジークの献身で砂糖が吐ける、といわれるほどジーク様は私を大切にしてくれていたそうだ。

 ただ私がビジネスパートナーっぽい態度だったから、重いとか思われたくないし、好きじゃないですとか面と向かって言われたくないと適度な距離感とやらを心掛けていたそうだ。

 だけど、あの夜の勇者みたいな行動をした私にやっぱり好きだ! みたいな気持ちが募ってしまったとか言っていてあれ以来、あんな堅物だった彼がプレゼントやら花束やら、めちゃくちゃ甘いお手紙やらをたくさんよこしてくるようになった。

 気づいてなかったのが私だけというので周囲は面白がっているが、まあ真実の愛だといわれて悪い気はしない。これからもうまくやっていけるだろう。


 貴族女性の幸せは、良い身分の男性に嫁いで子を成すこと。

 この世界でその考え方自体は変わらないし、そうやって生きていたほうが楽なんだろう。

 私はいまだジーク様を恋愛目線では見られていないけど、パートナーとして彼より良い人はいないだろうとも思う。

 なんせ私の無謀さも愛しいと笑ってくれるような彼だ。まだ十六なのに末恐ろしくはあるがそれはありがたいことでもある。

 あの日のことは、十代のとあるちょっとした思い出でしかないのかもしれないけれど小市民の私が守りたかったものは守られたしそれによって、もっと良い関係を築いて、もっと良い道を歩けるようになった。

 まだ完璧ではないあれやこれやは私がこの世界になじんでいないだけで、まだまだたくさんの未来が降ってわいてくるのだろう。

 その時隣にいる人がジーク様ならあるいは、と思う今日この頃である。