「あたし、嫌だったのに! すごく嫌だったのに! 勝手に体が動いて、それで……!」


最後には悲鳴のような声になっていた。


女子生徒は半狂乱状態になり椅子を蹴散らすようにして立ち上がった。


「どこへ行くの!?」


あたしの声も届かないまま、調理室から駆け出して行ってしまったのだった。


あたしは呆然として女子生徒が出て行ったドアを見つめていた。


「彼女、なにもかも覚えてたんだね」


「……そうみたいだな」


純也はうなづく。


人間に戻っても殺人鬼だったときの行動を覚えている。


それは生き地獄じゃないのかと考えてしまう。


でも、無理やり殺人を繰り替えさせられるよりも人間に戻ったほうがいいに決まっている。


あたしは無理して自分にそう言い聞かせた。


もう、なにが正解なのか自分でもわからなくなっていた。


「そういえば、俺の両親は死体の耳も切り取ってあったって言ってたな」


不意に純也がそう言った。


「え?」


今は人間に戻った後のことを考えていたので、あたしは驚いて聞き返してしまった。


純也はあたしとは別のことを考えていたようだ。