ズッズッと少しずつ肌を切り裂く音が聞こえてくる。


壮絶な痛みを感じるはずなのに、女子生徒はなんの反応も見せなかった。


さっき階段で見つけた男子生徒と言い、まるで痛みを感じていないように見える。


「切り取ったぞ」


純也の言葉にそっと目を開けると、、女子生徒の耳から血があふれだしていた。


途端に女子生徒の目の色が戻ったのがわかった。


ついで「いっ!」と、痛み声を上げ、顔をしかめる。


あたしはすぐに女子生徒から体をどかして「大丈夫?」と話かけた。


女子生徒は顔をしかめながらも「なんで? どうなってるの?」と混乱した様子を見せている。


殺人鬼でいたときは会話もままならないはずだから、彼女は今人間に戻っているのだ。


それを確認してあたしと純也は目を見交わせた。


あの噂は本当だったんだ!


絶望の中に現れた一筋の希望に一瞬にして未来が開けていくのを感じる。


アザを切り取れば殺人鬼は元に戻る。


これをみんなに知らせれば、この事件は収束するはずだ!


あたしは女子生徒の体を抱え起こした。


とにかく、この子を治療してあげることが先決だった。


この学校には各教室に救急箱が設置されているから、この調理室にもあるはずだった。


あたしは椅子に女子生徒を座らせて、棚を調べ始めた。