最初に純也があたしの前に立ち、女子生徒へ向けてモップを振り下ろした。


それは女子生徒も右肩に当たり、女子生徒は体のバランスを崩して倒れこんだ。


「遥、押さえていてくれ!」


言われてあたしは駆け出した。


女子生徒が立ち上がる前に、その体に馬乗りになったのだ。


力づくで押しのけて来ようとするが華奢で小さな子には負けなかった。


あたしは馬乗りになったままモップを横に持ち、女子生徒の両肩に押し付けた。


これで上半身を起こすことはもうできない。


その隙に純也は包丁を取り出していた。


あの噂が本当なら、女子生徒は元に戻ってくれるはずだ。


あたしはゴクリと唾を飲み込んでその様子を見守った。


純也が女子生徒の横に膝をつき、右耳を確認する。


そこには間違いなく星型のアザが出現していた。


純也が包丁を女子生徒の耳たぶにあてがった。


あたしは目をそらし、呼吸を殺す。


それでも、包丁が女子生徒の耳たぶを切り裂く感触が全身を駆け抜けていくようだった。