「包丁が何本かなくなってるみたいだ」


調理室の奥にある棚を確認して純也が言った。


「本当だね」


武器を持っているのが敵なのか味方なのかわからない。


あたしたちは包丁をそれぞれ手に持った。


これを使うことができるかどうかわからないけれど、とにかく使えそうなものを身に着けておくと安心できた。


あたしは包丁をケースに入れ、そのままポケットに入れた。


小ぶりな包丁が残っていて良かった。


純也は万能膨張をケースに入れ、ズボンに差し込んだ。


「これで少しは大丈夫だろう」


純也がそう言ったときだった。


開け放してあったドアから背の低い女子生徒が入ってきたのだ。


咄嗟に身構えて相手を確認する。


女子生徒の目は灰色だけれど、武器はなにも持っていない。


後ろから追いかけてくるような殺人鬼たちもいなかった。


あたしと純也は一瞬目を見交わせた。


殺人鬼になったからと言って力が変動するわけじゃない。


何度も攻撃を繰り返せば殺すこともできる。


この子の場合は簡単そうに見えた。