純也が再び足を進める。


一歩、二歩と階段を上がるにつれて死体に近づいていく。


あたしはしたいを見ないように気をつけながら階段を上がって行った。


そして死体の右側を通り過ぎる。


そのまま一気に駆け上がろうとしたときだった。


不意に足を誰かに掴まれた感触がして立ち止まっていた。


「遥、どうした?」


「なにか――」


言いながら視線を下へ移動させたときだった。


灰色の目があたしを見上げていた、


首が曲がりしっかりとこちらを向いている。


そして血にぬれた手があたしの足首を掴んでいたのだ。


男子生徒の顔がゆがみ、口角が上がるのが見えた。


ニィっと歪んだ口元から血がしたたり落ちた。


「イヤァ!」


悲鳴を我慢することができなかった。


「くそ! 遥を離せ!」


純也がモップで男子生徒の手を叩く。


最初から折れていたのか、男子生徒の手はすぐに力をなくしてダラリと垂れ下がった。


その隙にあたしは2階へ向けて駆け出した。


踊り場まで来て言った振り向くと、男子生徒が壁に手を着いて体を起こすのが見えた。


その体はあちこちが骨折していて、腕も足も首も、あらぬ方向を向いている。


一歩足を踏み出そうとした男子生徒はそのまま体のバランスを崩して、階段を落下していってしまった。


グシャッ! と柔らかなものが落ちる音が響く。


「行こう遥」


純也は顔をしかめてあたしの手を握りなおしたのだった。