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トイレの掃除具入れには予想通りモップが入っていた。


先に誰かに持っていかれていなくて良かったと安堵し、2人でそれぞれモップを持って廊下へ出た。


今廊下は静かだった。


でも、殺人鬼がどこから出てくるかわからない。


純也があたしの前をゆっくりと歩きだす。


あたしは後方を確認しながらそれについて歩き出した。


一歩歩くたびにシューズが床にこすれて音を立てる。


その音がうるさく感じて背中に汗が流れて行った。


トイレの水道で少し水分補給をしたものの、すぐに喉はカラカラになってしまう。


そろりそろりと階段まで来たとき、純也が足を止めた。


「どうしたの?」


小声で聞くと、純也が目で階段を確認するように促してきた。


身を乗り出した瞬間、灰色の目と視線がぶつかった。


咄嗟に叫んでしまいそうになり手で口を覆う。


灰色の目を持つ男子生徒が階段の途中で仰向けになり、口から血を流して死んでいたのだ。


誰かに突き落とされたのかもしれない。


あたしは一旦死体から視線をそらし、呼吸を整えた。


この学校内にはもっと沢山の死体がある。


その度に動揺していたら逃げ切ることはできない。


自分にそう言い聞かせて、あたしは純也に向けてうなづいて見せた。


ここをあがらないと2階に行くことはできない。


逆側の階段へ回るにはリスクが高すぎる。


行くしかないのだ。