これだけのヒントじゃなにか起こっているのかまだわからない。


感染しているとしても、一体なにが感染しているのか……。


「殺人鬼」


呟いたのは香だった。


「え?」


「ほら、最近噂になってた殺人鬼だよ。16歳の頃に犯行した、アザのある男」


「だけど、みんなにアザがあったかどうかわからないだろ」


純也の言葉にあたしはうなづいた。


あたしも一瞬、その噂が関係しているのではないかと考えていた。


でも、アザを確認できていないから、確証がなかったのだ。


「服の下とかに出てきてるのかもしれない」


香は真剣な表情だ。


本気であの都市伝説のせいだと考えいるようだ。


もっと、なにか人間を豹変させるウイルスが原因だと考えたほうが合理的な気はするけれど。


「アザの確認なんてできないよ」


雪が小さな声で言った。


相手は同級生といえどすでに何人も殺している殺人鬼だ。


雪の言うとおり、アザの確認なんてできるわけがない。


会話だって通じなくなっている相手なのだから。