生徒の波にもまれ、何度も香の姿を見失いそうになる。


階段を踏み外しそうになり、ヒヤリとする。


それでも足は止めなかった。


生徒たちの流れに乗って走る。


そしてようやく昇降口までやってきたときだった。


香が棒立ちになっているのが見えて、すぐに声をかけた。


「香!」


声をかけ、肩を叩く。


香は一瞬身をすくめて、それから昇降口へと指をむけた。


その指先を追いかけて視線を向ける。


その瞬間、自分の目を疑い、言葉を失った。


入り口にさっきの生徒たちが立ちふさがっているのだ。


逃げ出そうとする生徒と捕まえ、その場で暴行している。


「なにしてんのあれ……」


自分の声が情けないくらいに震えた。


足元のガクガクを震えだす。


だって、たった数分間の間にここは血まみれになっていたから。