先生が腰を下ろそうとすると、梨乃がすぐに座布団を持ってきた。


先生はその上に当たり前のように座る。


その様子に腹が立った。


梨乃は今までにも何度も先生に座布団を差し出してきのだろう。


「変態じゃなかったらなんだつーんんだよ」


啓治が声を荒げる。


先生はため息を吐き出して啓治を睨みつけた。


その顔は今まで見たことのない剣のあるもので、啓治でも一瞬たじろぐのがわかった。


「俺はずっと、娘を探しているんだ。それ以外には何の目的もない」


娘……?


そういえば、ここにいる全員が先生のことをお父さんだと思い込まされている。


他に目的があるなら恋人とかの方がいいだろうに。


僕はジッと先生の目を見つめた。


「娘を探すって、どういうことですか?」


僕の質問に先生は視線をこちらへ向けた。


「まぁ、お前らはどうせここから出られない。話してもいいだろう」


先生は不穏な言葉を前置きとして、過去を振り返ったのだった。