足音はどんどん近づいてきて、ふすまが開いた。


ふすまの向こうは長い廊下になっているようで、大きな窓から庭が見えるようになっていた。


昔ながらの建物だとわかった。


その廊下に先生が立っていた。


「お父さんお帰り!」


「お帰りなさいお父さん!」


少女が口々に言う。


先生は柔らかな笑みを浮かべて少女たちにうなづいて見せると、僕らの前までやってきた。


その顔はもう笑ってはいなかった。


いつもの無表情だ。


なにを考えているのかわからなくて、僕の鼓動は早くなる。


「ロープをとけ!」


そう言ったのは啓治だった。


先生はチラリと啓治へ視線を向け、そして大げさなため息を吐き出した。


「そうだぞ変態教師!」


大夢も叫ぶ。


その言葉に先生が一瞬体を震わせて反応した。


「君たちは、先生をただの変態だと思っているのか?」