その笑顔に僕はまた言葉を失う。


初めて梨乃に会ったのは小学校3年生のときだった。


クラスで自己紹介をしたとき、僕の愛という名前を聞いてみんな笑い出した。


女の子みたいだって。


それまでにも何度か同じ理由で笑われてきたから、僕はこの名前が大嫌いだった。


女の子みたいな名前。


おまけに背も小さくて華奢で色白で、時々本当に女の子と間違われた。


だから、大嫌いだった。


『とてもいい名前だね』


みんなが笑っている中、梨乃がそう言ったんだ。


梨乃の一言にみんなの笑い声が消えて行った。


『男の子にも似合う名前だよね』


梨乃はこちらへ笑顔を向けた。


最初は梨乃の言葉を信じなかった。


あんなことを言っているけれど、本当は心の中で笑っているんだ。


そう思っていた。


でも梨乃は違った。