「それも、洗脳だ」


啓治が怒りをこめた声色で言った。


「こいつら全員自分の普段の生活を忘れてるんだ」


「忘れてる?」


「あぁ。正確に言えば忘れさせられたって感じだな。みんな、自分を先生の子供だと思ってる」


「先生の子供?」


僕は眉間にシワを寄せた。


どういうことか全然理解できなかった。


ただひたすら気持ちが悪い。


5人の女の子たちを誘拐してきて、自分の子供だと洗脳するなんて頭がおかしなヤツがすることだ。


こみ上げてくる怒りと吐き気。


僕はこの感情のやり場がなくて奥歯をかみ締めた。


「梨乃! 僕だ! 愛だよ! 同じクラスで、仲が良かっただろ!」


僕は唾を飛ばしながら叫んだ。


とにかく梨乃に元に戻ってほしくて必死だった。


「愛? ごめん、それって君の名前?」


梨乃は申し訳なさそうな顔を浮かべる。


「そうだよ、僕だよ!」


「わからないけど、とてもいい名前だね」


梨乃はそう言って笑顔を見せた。