胸がグッと締め付けられて苦しくなる。


やっと、見つけた……!


涙で視界が滲んだ。


それでも梨乃のことだけは見ていた。


「よかった梨乃。生きてたんだね」


そう言う僕の言葉にかぶせるように梨乃は口を開いていた。


「ごめん、誰?」


首をかしげ眉を寄せてそう言ったのだ。


「え?」


一瞬にして涙が引っ込んだ。


僕は唖然として梨乃を見つめる。


「知ってる人だっけ?」


梨乃はマジマジと僕の顔を見つめる。


それでも思い出せないのか、首はかしげられたままだった。


さっきの感動がスーッと冷えていくのを感じた。


ショックでなかなか言葉が出てこない。


「嘘だろ梨乃。僕のことを忘れたの?」


「ごめんなさい。名前はなんていうのかな?」


聞かれても僕はすぐには答えられなかった。


嘘だろ。


僕らが離れていたのはたった一ヶ月だ。


たった一ヶ月で僕のことを忘れてしまうなんて……!