おまけに丘の上に建っているから、声を上げても誰にも届かないということだ。


体は拘束されているのに、どうして口がふさがれていなかったのか自体を把握することができた。


おかげで随分と早く状況を飲み込むこともできたと思う。


ただ……次になにをするべきなのか、策はなかった。


みんなを助け出すつもりがこうして3人とも捕まってしまったのだ。


僕たち以外に先生の正体を知っている人もいない。


誰にもなにも伝えてこなかった。


まさに弾丸登山で遭難寸前の状態だ。


僕らは生死の狭間にいる。


その時、動き回っている女の子の中によく知った顔を見つけて息を飲んだ。


一ヶ月前からずっと探してきた子。


僕のことをずっと守ってくれていた子。


「梨乃!!」


テーブルをふいていた梨乃が手を止めて、僕を見た。


その真っ直ぐな目で見つめられて、泣きそうになってしまう。


梨乃だ。


間違いなく梨乃だ!


僕がずっとずっと探していた梨乃だ!