思い出して今度は全身が冷たくなった。


そうだった。


僕は先生に誘拐されたんだ。


「落ち着け!」


その声に振り向くと、そこには椅子に固定されている啓治と大夢の姿があった。


僕は大きく目を見開く。


「2人とも、無事だったの!?」


「あぁ。でも見ろよ。あいつ、やっぱり頭おかしいんだぜ」


啓治に言われて僕はようやく部屋の中を見回す余裕が持てた。


なにより、僕1人がここにいるわけじゃないとわかったのは大きかった。


しかし、安心してもいられなかった。


広い和室の中には僕ら3人だけでなく、5人の女の子たちがいたのだ。


みんな、どこかで見たことがある。


「まさか、誘拐された子たち……?」


見たことがあるのはテレビニュースに写真が出ていたからだ。


「そうみたいだな」


啓治はうなづくが、決していい状況とはいえなかった。


僕たち3人は拘束されているし、なにより5人の少女たちは様子がおかしかった。


1人は男物のスーツにボタンをつけなおしているし、1人は部屋の掃除をしているし、1人は花瓶に花をさしている。