☆☆☆

それから30分後。


僕は電信柱の影に隠れて先生を待っていた。


そこに現れたのは同じ学校の制服を来た女子生徒だ。


女子生徒は隣のクラスの子で、僕は3年生の頃同じクラスになったことがある。


先生が並んで歩いていているけれど、よく知っている顔だからか女子生徒に警戒心は全く見られない。


その顔には笑みすら浮かんでいる。


「わざわざ心配してくださって、ありがとうございました」


先生の車の前までやってきて、女子生徒は先生へ向けて頭を下げた。


「いや。またお母さんのことでなにかあったら、すぐに連絡しなさい」


「はい。今のところお母さんの病気は落ち着いているので大丈夫だと思いますけど」


どうやらこの子のお母さんが病気で、それを心配して家庭訪問に来ていたみたいだ。


「それじゃ、先生さよなら」


今までも何度かこのような家庭訪問を行っていたのだろう。


女子生徒は笑顔で先生に手を振っている。


先生はそのまま車に乗り込もうとしたが、次の瞬間ズボンから黒くて四角いものを取り出していた。