スーパーやコンビニが乱立している付近と比べれば、随分と寂れた地区になる。


何十年も前に開発されたものの、ここよりもっと利便性のある場所に人が集まってしまったのが原因となり、すぐに廃墟同然になってしまった。


1度人が離れると戻ってくることはなかなか難しい。


廃墟の多い場所に暮らしたがる人はあまりいないからだ。


そんな場所に先生が用事があるなんて思えなかった。


生徒の誰かがここらへんに暮らしているとか?


その可能性はあった。


このへんは地価がとても安くなっているらしく、お財布には優しいのだとお母さんが言っていた。


先生の車の行く末を見ていると、右手にある空き地に入っていくのが見えた。


あんなところに入ってなにをするつもりなんだろう?


僕は首をかしげて路地へと入る。


広場の手前まで移動して、電信柱の影に隠れて先生が出てくるのを待つ。


しばらくすると車のドアの開閉音が聞こえてきて、先生が路地へと出てきた。


スーツからTしゃつとジーンズ姿に着替えていて、手にはあの黒いバッグを持っている。


僕は知らずに息を飲んでいた。


あの時と同じだ!


先生は路地を奥へと進んでいく。


その姿が見えなくなるまで見送って、僕は自転車をその場に置いて広場へと向かった。


車の中を確認してみると、助手席にボストンバッグが置かれているのが見えた。


きっと、スーツをこの中に入れているんだろう。


後部差席も確認したがそこにはなにもなかった。


カギはしっかりとかけられていて、中に入ってまで確認することはできない。