「え?」


予想外の言葉に僕は視線を戻し、聞き返す。


「このところ町全体で行方不明事件も起きているし、なんだかおかしいわ」


お母さんの声は真剣そのものだ。


子供が学校に行きたくないとだだをこねるのはわかるが、こうして登校することを否定される日が来るとは思っていなかった。


それくらい、僕のことを心配しているということだった。


一瞬、こころが揺らいだ。


先生のことはもう僕1人でどうこうできる問題でもない。


このまま学校を休んで、事件のことは警察に相談すればいい。


そう、思ってしまった。


でも……。


大夢と啓治の顔を思い出す。


2人とも、僕に付き合ってくれたんだ。


普段はあんなに意地悪な2人なのに、どうしてあそこまでしてくれたのかいまだにわからない。


だけど行方不明の事件を追いかけ初めてから、2人は僕をバカにするようなことは言わなくなった。


僕はそっとお母さんの手をどけた。



「僕なら大丈夫だから。行ってきます」


笑顔を浮かべてそう言った。


お母さんが一瞬泣きそうな顔になる。


どしてそんな顔をするんだろう?


疑問に感じたけれど、質問すればまた引き止められると思って、僕はそのまま家を出たのだった。