それから15分くらい経過したとき、啓治が登校してきた。


いつも威勢よく挨拶を交わしている啓治が、今日はおとなしく真っ直ぐ僕のほうへ歩いてくる。


近づいてくるその顔は真剣で、少し青ざめていた。


「大夢は来てねぇか」


「うん」


僕はうなづくことしかできなかった。


大夢を巻き込んでしまったのはこの僕だ。


啓治は怒っているに違いないと思っていた。


案の定、啓治は拳を握り締めると僕の机を殴りつけて「くそっ!」と毒を吐いた。


その怒りにビクリと体がはねる。


今日はどんなにヒドイイジメられかたをするんだろうかと身が小さくなる。


「あいつ、絶対に許せねぇ」


怒りで震える声で啓治が言うので、僕は「え?」と、聞き返した。


「あいつって言ったらあいつしかいねぇだろ! 香西だよ香西」


啓治に言われて僕はあっと小さく口を開けた。


「ぼ、僕のことじゃなくて?」


勇気を出して聞いてみると、啓治はけげんそうに眉を寄せた。


「なんでお前に怒らなきゃなんねぇんだよ?」


「そ、それは……」


怒られなかったことが予想外で、僕は言葉に詰まってしまった。


しかし、啓治はそんなこと気にしていない様子で、ブツブツと香西先生へ向けた文句を呟いている。