幼稚園のころからあの屋敷の存在は知っていたけれど、どれだけお金持ちな夫婦が暮らしているのだとうかと思っていた。


まさか、あの先生の家だったとは。


「へぇ。あそこって人が住んでたんだな」


啓治も驚いた表情を浮かべて窓の外を見ている。


「今は先生が1人でいるはずだよ。昔はもっと沢山家族がいたみたいだけど、両親が早く似なくなったり、兄弟は結婚して家を出たりしたんだって。お母さんが言ってた」


さすがに、家が近いだけあってある程度の情報は入ってきているみたいだ。


それから僕たちは大夢の部屋で先生の車を監視した。


けれど、夕方のチャイムが鳴り始めるくらいの時間に戻ってきた先生は、それからは外へ出なかったようだ。


「2人とも、送っていってあげるからそろそろ帰りなさい」


いつまでも部屋から出てこようとしない僕と啓治を見かねて大夢のお母さんが声をかけてくれた。


残念だけど、今日はここまでのようだ。


「明日も来ていい?」


部屋を出る前に振り返り、大夢に聞く。


大夢は僕からそんな風に言われるとは思っていなかったようで一瞬目を大きく見開いた。


そして「別にかまわないけど」と、ぶっきらぼうに返事をした。


それで十分だった。


明日は学校の設立記念日で休みの日だ。


1日中ここにいて先生のことを見張ることができる。


僕は大夢と啓治に感謝しつつ、部屋を出たのだった。