混乱で頭の中は真っ白になる。


脳みそに直接汗をかいているような感覚。


なんで?


どうしてと疑問ばかりがグルグルと回って、答えが見つけられない。


「あいつが梨乃を誘拐したんだ!」


啓治の叫びがトイレ内にこだまして、ようやく我に返った。


「こ、ここに出てる子の名前。みんな行方不明になった子の名前だ」


大夢がガタガタと体を震わせて言う。


「どうするんだよこれ。こんなゲームして、どうするんだよ!」


大夢は両手で啓治の腕を強く掴んで揺さぶる。


「し、知らねぇよ! 俺はなにも見てないし、なにもしてない!」


そう叫ぶとゲームの電源を切ってしまったのだ。


「なにするんだ!」


僕は思わず叫び、啓治に続きをプレイするように促した。


このゲームをすれば梨乃が今どこにいるのかも突き止めることができるかもしれない!


「む、無理だ」


啓治は首を左右に振って言った。


「え?」


「これ、一度電源を切ったら記憶は消えるんだ」


啓治の言葉に愕然として目を見開いた。


「嘘だろ、なんだよそれ!!」


自分でも信じられない力で啓治からゲーム機を奪い取り、乱暴に電源をつける。


しかし、啓治の言葉通り先生の記憶は綺麗さっぱり削除されていたのだった……。