「そ、そんなわけねぇよ」


啓治がひきつった笑顔を浮かべる。


が、その顔は珍しく青ざめていた。


僕はゲーム画面に視線を戻した。


さっきから誰を誘拐しますか?


という質問が出ていて、下の枠の中に誘拐する候補の名前が書かれているのだ。


《森田千佳 笹川弘子 角谷風》


目で読み進めた瞬間、脳裏にニュースキャスターの声がよみがえってきた。


『行方不明になった少女の名前を一部公開します。森田千佳ちゃん、12歳。笹川弘子ちゃん、11歳。角谷風ちゃん、12歳』


嘘だ……。


そんなことありえない。


だって、先生は先生だ。


先生は、子供の見本になる人だ。


そう思う反面僕の心臓は早鐘を打ち始めていた。


緊張で喉が渇いてゴクリと唾を飲み込む。


これ以上先を読み進めてはいけないと思いながらも、視線はゲーム機へ釘付けになっている。


《大谷美鈴 金木梨乃》


ドクンッ……!!


梨乃……?


なんで梨乃の名前がここにあるんだ?