首をかしげていると、不意に風が吹き抜けてあたしの髪を揺らした。


窓は開いていないはずなのに。


そう思ったときだった。


『お父さんをたすけてくれてありがとう』


女の子のそんな声が聞こえてきて、振り向いた。


しかし、そこには見慣れた教室風景が広がるばかり、


グラウンドへ視線を戻すと、あの3人も立ち止まり周囲を見回していた。


今の声、あたしたちにだけ聞こえたんだ。


「梨乃、やっぱりなんか様子が変だよ? 大丈夫?」


「大丈夫だよ」


あたしは苦笑いを浮かべて答える。


『どういたしまして』と、心の中で呟いて。




END