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一ヵ月後の昼休憩中、愛が啓治たちに声をかけられてグラウンドへ向かうのをぼんやりと見つめる。


「坂口君、最近イジメられなくなってよかったね」


委員長に声をかけられてあたしは慌てて「べ、別に」と、ごまかした。


本当はよかったと思っている。


あの愛があたしを助けに切ってくれたときだって、信じられなかった。


愛はやっぱり男の子なんだなって再確認した。


そう思ったとき、胸の奥がなんだかむずかゆくなって顔をしかめた。


「どうしたの?」


委員長に聞かれてあたしは首をかしげる。


「わかんない。なんか、変な感じがした」


それが恋と呼ぶものだとわかるまで、また少し時間がかかる。


窓辺へ近づいてグラウンドを見れば、男子たちはさっそくサッカーをして遊んでいる。


愛はあまり運動神経がいい方じゃないけれど、一生懸命にグラウンドを走っている。


「あの3人、すっかり仲良しだよね。なにかあったのかな?」


「さぁ……」


本当のことは絶対に口には出せなかった。


もうイジメられなくなった愛。


あたしの出番はもうないのかなぁ。


そう考えると、また胸の奥に違和感があった。


本当に、さっきからなんなんだろう?