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僕たちは全員無事に保護された。


先生は警察の人たちに連れて行かれ、どうなるのかはわからない。


「本当にもう。なんて危ないことをするのよ!」


事情を知って警察まで迎えに来てくれたお母さんは何度も何度も僕の体を揺さぶって怒った。


その目は真っ赤にはれていて、ここに来る前に泣いたこともわかった。


僕はそんなお母さんに「ごめんなさい」と言うしかなかった。


ただ梨乃を探し出したいと思っていただけなのに、まさかこんなことになるなんて考えていなかった。


すぐに大人の人に相談しなかったことも、こっぴどく怒られた。


でも最後には僕のことを抱きしめて「よくやった!」と、ほめてくれた。


僕は人前に抱きしめられることが恥ずかしくて、身をよじってお母さんから逃れた。


とにかく、僕らは全員生きて戻ってくることができた。


翌日には誘拐ニュースのことは大きく報道され、教育関係者のとんでもない不祥事に渋面を作る専門家やニュースキャスターの顔が毎時間放送された。


それでも、僕らのことはニュースにならなかった。