香西先生のことなんて少しも怖くなかったはずなのに、大きな恐怖がうねりを上げて突き抜ける。


先生は僕が持っていたゴルフクラブを片手で掴むと、強引に奪い取った。


そして壁に投げつける。


ガンッと大きな音がして、壁に穴が開いた。


相当怒っていることがわかって、生唾を飲み込む。


これから僕らはどうなるんだろう。


このまま死ぬのかな。


さっきの少女たちのように、今度は僕らがじりじりと後ずさりをする番だった。


しかし、ふすまの前には少女たちが立ちふさがっている。


まさに八方塞の状態だ。


「どうする? どうやって殺されたい? ナイフか? それともゴルフクラブか?」


先生は僕らに選択させようとする。


自分が殺されるための選択肢なんて、これほどひどいものは世の中にないだろう。


後ずさりを続けていた僕は背中がなにかにぶつかってその場にしりもちをついてしまった。


振り向くと、少女の1人が立っている。


少女はおかしそうな表情をして僕を見下ろした。


その瞬間、この空間に僕らの仲間はいないと実感した。


この子たちはみんな先生の味方だ。


先生がどんなことをしても肯定し、手を貸す。


そんな子しかいないのだ。


僕は先生を見上げた。


見下ろしてくるその顔は般若のように見えて震えた。