「頼むよ。僕は攻撃したくないんだ」


そう言いながらジリジリと少女たちに近づいていく。


少女たちは僕が近づいた分だけ後ずさる。


いいぞ。


このままゆっくり移動して、そのまま廊下に出るんだ。


少女たちを刺激しすぎないよう細心の注意を払って僕は足を進める。


前に前に前に。


もう少しで少女たちの後ろのふすまがぶつかる。


そうなると逃げるか、部屋から出るかの二択しかない。


もう少しだ!


「困るよ君たち。私の娘にそんなことしちゃあ」


後方から聞こえてきた声に一瞬体の動きが固まった。


啓治と大夢が勢いよく振り返る。


僕は1人遅れて、カタカタと壊れたおもちゃのようにゆっくりと振り向いた。


そこには先生が立っていた。


額から血を流し、口角を上げてあっという間に僕たちに近づいた。


「お父さん!」


少女たちが嬉しそうな声を上げる。


「君たちは本当にしかたのない生徒だなぁ」


先生はボキボキと指を鳴らし、僕たちを見下ろした。