「あたし、隣の部屋にいたのよ。そのときあなたたち3人の声が聞こえてきて、それで先生が部屋を出て行ったの。幸いあたしは拘束されていなかったから、部屋にあったゴルフクラブを持って来ることができた」


少女は淡々と説明する。


「どうして1人で逃げなかったの?」


「逃げようと思ったよ。でもできなかった。ここに女の子たちがいるのは最初に見せられていたし、君たちがどうなるかも心配だったし」


少女は僕の拘束を解くと、今度は啓治の拘束を解き始めた。


「梨乃……!」


すぐに立ち上がると足が痛くてその場に崩れ落ちてしまった。


手足のしびれが去るのを待ち、梨乃に近づく。


「梨乃! 梨乃、大丈夫?」


梨乃の肩に手を置き、顔を覗き込む。


梨乃はぼんやりとした表情を浮かべている。


「梨乃、僕だよ、愛だよ」


話しかけてもあまり反応しなくなっている。


とにかく、早くここから出ないと!


梨乃の手を握り締めて、細い廊下へ続くふすまへ体を向けた。


その瞬間だった、他の4人の少女たちがふすまの前に立ちはだかっていたのだ。


「お父さんになにするの!」


少女たちは怒りをあらわにして起こっている。


脱出しようとしていた啓治と大夢、それに洗脳されていない少女が困惑して足止めを食らっている。


「どけろよ!」


啓治が威嚇する。


しかし少女たちは少しもひるまない。


大夢が優しく話しかけても、その態度は少しも変わらなかった。