突き刺さる場所が悪ければ簡単には死ねなくなる。


そんなことを考えてきつく目を閉じた。


先生がナイフを振りおろす風を切る音が聞こえる。


これで、終わり……!


ギュッと閉じた目はなにも見えなかった。


ただ呼吸音だけが聞こえてきていた。


そして、降りかかってくるはずの痛みも襲ってこない。


次に聞こえてきたのはドサッと、なにか重たいものが倒れる音だった。


僕はハッとして目を明ける。


そこには信じられない光景があった。


横倒しになり、気絶している先生。


その後ろにはゴルフクラブを持った女の子が立っていたのだ。


「あ、君は……」


僕は呟く。


さっき僕と一緒に先生に誘拐されてきた子だったのだ。


「君どうして? 洗脳は?」


混乱しながら聞くと、少女は左右に首を振った。


「あたしは大丈夫。先生が洗脳の本を持ってきたから、なるべく声を聞かないようにしていたの」


少女はそう言うとゴルフクラブを捨てて、ナイフで僕の拘束を解き始めた。