先生が梨乃からナイフを受け取り、仕切りなおしのようにこちらへ視線を向けた。


そしてジリジリと近づいてくる。


「愛!」


叫んだのは啓治だった。


後ろで手足をばたつかせ、どうにかロープを解こうとしているのが伝わってくる。


でももう無理だよ。


僕たち3人だけで誘拐犯に挑むなんて、結局は無理なことだったんだ。


諦めてうなだれる。


ごめんね2人とも。


僕のせいでこんなことに巻き込んで。


もう少しで友達になれると思っていたのに、残念だな……。


先生の影が僕の上にふりそそいだ。


手に握り締めたナイフが、今度は高々と振り上げられている。


どこを突き刺されるんだろうか。


きっと、首を切り裂かれていたほうが簡単に死ねたんだろうな。