しかし、少し切れただけだということがわかった。


血も出ていない。


先生がナイフで僕の首を切り裂く寸前、梨乃が先生の横腹を蹴り上げたのだ。


先生は体のバランスを崩し、ナイフは僕の首を少しだけかすめ、そして倒れこんだ。


「梨乃?」


聞くと、ナイフを奪い取った梨乃が驚いた表情で僕を見た。


「愛……?」


名前を呼ばれて嬉しさがこみ上げてくる。


今目の前にいる梨乃は僕の知っている梨乃だ。


よかった、目が覚めたんだ!


そう思った直後先生が立ち上がっていた。


梨乃を睨みつけている。


「梨乃逃げろ!!」


僕は叫んだ。


今度こそ僕は梨乃を助けるんだ。


洗脳が解けた今なら、梨乃は逃げ出すことができる。