「そろそろ終わりにしようか」


先生が僕の首にナイフを押し当てる。


冷たい感触にショックで死んでしまうかと思うほどの恐怖がわきあがる。


「梨……乃」


ダメだ。


声が出ない。


ナイフを押し当てられているせいで声帯がつぶれてしまったんじゃないかと思うほど、喉がふさがっている。


梨乃頼む。


目を覚ましてくれ。


助けてくれ!


こんなところでまた梨乃に助けを求めるなんてダサイと思う。


だけど、今はもうそれしか光が見えなかった。


「梨乃……!!」


懸命に声を張り上げるのと、先生がナイフを横に引くのとがほぼ同時だった。


チリリとした痛みを首に感じ、思わずのけぞる。


しかし次の瞬間先生の体は横倒しに倒れていたのだ。


ナイフが音を立てて落ちて、それを梨乃が拾った。


全部が一瞬の出来事だった。


僕は首元に痛みを感じて顔をしかめる。