「君たちを殺すに決まってるだろ」


先生はめんどくさそうに説明した。


『殺す』


そんな単語を先生の口から聞く日が来るとは思わなかった。


だって、僕らにとって先生は先生で、尊敬するべき人だから。


そう思いながらも、自分たちは香西先生のことをバカにしていたことを思い出した。


「ぼ、僕たちこれから真面目になります!」


僕は情けないくらいに声を震わせて言った。


「もう絶対、先生のことバカにしたりしません! だから、助けてください!」


土下座をしてもいいくらいだったけれど、椅子に固定されているので頭をたれることしかできなかった。


「君たちが私をバカにしていることなんてどうでもいいんだよ。私はただ、娘たちと平和に暮らしていきたいだけなんだ」


先生はそう言ってゆっくりと僕に近づいてきた。


恐怖で頬が引きつるのがわかった。


ナイフの刃先はしっかりと僕のほうをむいている。


本当に殺される!


そう思ったとき、先生の後ろに梨乃が立っているのが見えた。


「梨乃助けてくれ! 頼む!」


「無駄だよ。ここにいる子たちは全員アキナだ。私がそう洗脳したからな」