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その日はろくに眠ることができないまま朝を迎えていた。


7時のアラームを消してスマホを確認するが、千紗からの連絡は入っていない。


「どこに行ったんだよ……」


呟き、いつもより随分早いけれど制服に着替えをした。


このまま登校時間までのんびりしていられるほど、落ち着いていられなかった。


キッチンで焼いていないパンをほお張り、そのまま玄関へ向かう。


「久典、そんなに慌ててどうしたの?」


靴を履いているときに母親が追いかけてきて、そう声をかけた。


「昨日の晩から千紗が家に帰ってないんだ。連絡も取れないし、ちょっと早く出て近所を探してから行く」


俺の言葉に母親が目を丸くするのがわかった。


「千紗ちゃんが帰ってないって、どういうこと?」


「わからないんだ。じゃ、行ってきます」


まだなにか聞きたそうな母親をその場に残して、俺は家を飛び出したのだった。