影野くんは迷いもなく、確実に一歩一歩登っているのだ。
…さっきから影野くんがわからないんだけど。
いつもの雰囲気はあまりなくて、素っ気ない気がするのは私だけかな。
考えているうちに私たちは階段を登りきっていた。
「…か、影野くん?屋上は鍵かかって…」
るんじゃないの?と言いかけたら、影野くんはニヤリと口角を上げる。
「心配しなくても大丈夫。鍵ならあるから」
いたずらっ子のような笑みを浮かべ、ポケットから小さな鍵を取り出した。
「え…」
影野くんがその鍵を鍵穴に差し込んで回すと、ギィ…という音がして。