「あの!」


俺が声をかけると


その子は止まってくれる


そして綺麗な髪をふわっと揺らしながらその子は振り返る


振り返るとさっきまでちらっとしか見えてなかった顔も初めてちゃんと見た


「………」


何も言わずそのまま立ち止まる


だからこそ俺は今までの思いを伝えるように言った


「俺の事……覚えてますか…?」


覚えてなかったらそれでいい


また1から始まりでもいいんだ


この間が余計に緊張感を増すけど


今日会えたことは本当に嬉しいんだ


「覚えてるよ」


女の子は髪を耳に掛けながら、少し微笑んで俺に言う


「……え」


「……あの時はありがとう
私、なんて声掛けたらいいかわかんなくて」


「……いや、全然」


俺も今なんて声をかけたらいいかわかんない


「光井風馬君…だっけ」


「…うん」


「同じクラスで…席もすぐ近くでよかった
これからもよろしくね」


「こ、こちらこそ!よろしく!」


「じゃあまた明日」


「うん、じゃあね」




その子は階段を降りていった



……………