「おい」



祐樹先輩が男に詰め寄る。

そして、男の胸倉を思い切り掴み上げた。



「自分がなにをしているのか、分かってんのか」



祐樹先輩の低い声。

路地裏に響き渡る、その低い声は、祐樹先輩の怒りを感じた。



「俺はっ、頼まれただけで!」

「頼まれた?」



祐樹先輩が眉をひそめる。



「如月学園のギャルみたいな奴に金、渡されて……っ」

「名前は?」

「し、知らないっす! 左目の下にほくろがある女で!」



如月学園のギャル?

左目の下にほくろ……?


それって。

祐樹先輩と目を合わせる私。

祐樹先輩も同じことを思ったんだろう。


あのギャル集団のボス……。

目の下にほくろがあった気がする。

記憶は曖昧ではあるけれど……。

あのギャルボスなら、男たちにお金を払って私を襲わせることもやりそうだ。



「いってぇ……」



地面に伸びていた男の意識が戻る。

落ちていたナイフを再び掴んだ男。

ゆらりと立ち上がった。

その目線の先には祐樹先輩がいる。