「奈々っ! 大丈夫か!?」

「ゆう、き、せんぱい……」



祐樹先輩に抱きしめられた瞬間、私の目から涙がこぼれ落ちた。


これは、なんの涙なのか。

恐怖なのか。

安堵の涙なのか。


祐樹先輩が私から離れる。

腕に巻かれたロープを解いてくれる。

腕にはロープのあとが残っていた。



「奈々。これ羽織っておけ」



祐樹先輩は、着ていたパーカーを私にかぶせた。

それから、男たちに視線を向ける。

男たちはよろけながらも立ち上がり、祐樹先輩を睨んでいた。

ナイフを持った男が、祐樹先輩に襲いかかる。


その瞬間。

祐樹先輩は、ナイフを持った腕を掴み背負い投げをした。

きれいに決まった背負い投げ。

男が地面に叩きつけられた瞬間、鈍い音が路地裏に響いた。

完全に男は伸びている。



「お前……っ。黒崎 祐樹か?」



私のシャツに手をかけていた男が、祐樹先輩から一歩後ずさりをする。



「だったらなんだ」

「なんで、黒崎 祐樹がここに……」



男は祐樹先輩を知っているようだ。

だけど、祐樹先輩は男とは面識がなさそうで。

男は祐樹先輩を見て、顔を青ざめていた。