緊張して動けなくなった私の手を取って
一緒に撮影に入ってくれた事
そしてそれが“楽しかった”って記憶ーーー

「うん。
 不思議だけど、あの時は楽しかった。
 あんまりカメラも意識しなかったし」

たぶんそれは然さんの魅力と
言葉の魔法に掛かったから。

「自然な表情が1番だよ。
 だからまた、俺を見て」

「そ、そんな改めて言われると
 意識しちゃって見づらいって。」

それでなくても然さんの整った顔は
格好良くて緊張するのよ。

「俺に意識してくれているんだ。
 それは嬉しい」

「ちょっと、からかわないでよ。
 そしてそんなに《《まじまじ》》見ないで…」

話しながらも然さんにずっと見つられてしまい
笑顔の練習どころの問題じゃなくなってきた。

「ほら、ね?
 話してたりすると表情が豊かになる」

「あ…」

言われて初めて鏡に映る自分の表情が
照れたり困ったりしてるのがわかった。

「大丈夫。
 少しずつ慣れていくよ」

ニコリと笑う彼の思惑に
まんまと乗ってしまったように思える。